2021年11月のひとこと


〈前略〉

そんな中で特に印象に残ったのが、仮設校舎の廊下に雑巾がけをする生徒です。彼女は、母親を失い、仮設校舎に入学し、仮設校舎から巣立っていきました。昨秋、新校舎が完成し、仮設校舎は取り壊されましたが、彼女にとっては、生涯の記憶に刻まれた唯一の「校舎」でした。

その彼女が廊下に膝を着き、袖をまくり上げ、仮設校舎の廊下を一心に拭き続ける姿を見ていると、詩人坂村真民の「鈍刀を磨く」という詩に重なるのです。

鈍刀を磨く(坂村眞民)

鈍刀をいくら磨いても
無駄なことだというが
何もそんなことばに
耳を貸す必要はない
せっせと磨くのだ
刀は光らないかもしれないが
磨く本人が変わってくる
つまり刀がすまぬすまぬと言いながら
磨く本人を 光るものにしてくれるのだ
そこが甚深微妙(じんしんみみょう)の世界だ
だからせっせと磨くのだ

 

仮設校舎の床が、彼女に「すまぬすまぬ」と言っているようでした。鈍刀を磨き続ける刀研師のように、床よりも、彼女の方が輝いて見えました。

〈後略〉

「子どもたちは未来の設計者 -東日本大震災「その後」の教訓-」
鈴木利典著 ぱるす出版 2021年6月

人の評価は気にせず、自分が大切だと思うことに一所懸命に取り組めば、その人自身が輝くようになる。まさにその通りだと思います。生徒達にはこの本郷で自分を輝かせる何かをぜひ見つけてもらいたいと思います。


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