2021年1月のひとこと


心理学者のマステンとアイゼンバーガーは、実験参加者が三人でコンピュータゲームをしているときに、自分一人だけが除け者にされる(若者言葉では「ハブられる」)経験をしたときの脳活動を調べるという実験をしました。この実験の結果を踏まえて亀田達也氏は次のように述べられています。

(前略)

他者が社会的苦痛を経験しているとき、私たちは「なぜ」という問いを発します。この実験では、「なぜ被害者はハブられているのだろう」という問いだけでなく、「なぜ加害者はハブっているのだろう」、「どちらに問題があるのだろう」、「これはいじめなのか、それとも?」という疑問を含めて、関係するさまざまなプレイヤーの考えや気持ちを推論することで、起きている事態を客観的に理解しようとします。そして「ハブ状況」を正確に理解する必要は、成人よりも、「現場に近い」中学生で高いと考えられます。このような舵取りの難しい社会場面(政治的場面と言ってよいかもしれません)をうまく切り抜けるために役立つのは、自動的に立ち上がる情動的な共感よりも、いろいろな人の視点を取ったうえで適切な判断をするための、より認知的な共感でしょう(第1章で論じた「マキャベリ的知性」の話と深く関係します)。

認知的共感は、必ずしも情動的共感のように、いつでも直ちに「温かくやさしい思いやり」を生むものではありませんが、次に見るように、私たちの共感システムが「内集団を超える利他性」を発揮するために、欠くことのできない本質的な役割を担うと考えられます。

(後略) ※波線は引用者による 

モラルの起源 ―実験社会科学からの問い」 亀田達也 岩波新書

 

『情動的共感は「温かくやさしい思いやり」を生むもの』
『認知的共感は私たちの共感システムが「内集団を超える利他性」を発揮するために本質的な役割を担うもの』

という記載があるように、一言で「共感する」といっても、その時の状況によって「共感」の仕方にも違いがあるようです。しかし、いずれにせよ、人間関係を円滑に構築して行くためには、この「共感する」力を持つことが非常に大切です。現在のコロナ禍において、「仲間と過ごす時間の大切さ」をこれまで以上に感じた生徒がたくさんおりますが、それは彼らが「他者を感じる」力、すなわち「情動的に共感する」力や「認知的に共感する」力を順調に育んできたからだと私は思っています。共感性を高めることで人は利他的になりやすいと言われていますが、この「共感する」力を更に伸ばし、「内集団を超える利他性」を獲得するために、生徒諸君にはこの本郷というフィールドを大いに利用し、クラスやクラブに留まらず、交流の輪をさらに広げて行ってもらいたいと思います。

この一年が皆さんにとって素晴らしい年になりますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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