今月の一言
2026年8月のひとこと
夏休みには、普段とは異なる独特な時間の流れが生じます。私事となり恐縮ですが、私の場合、教員という職業の特性があるのかもしれませんが、夏休み期間になるとふとした瞬間に普段は沈潜していた過去の夏の光景や思いがよみがえってくることがあります。
小学生の頃、昆虫採集に夢中になって、早朝から雑木林の中で過ごした甘美で濃密な時間の感覚は、雑木林の中の匂いや光の射し具合、湿った葉の感覚などと一緒に、私の記憶の襞にこびりついています。この感覚は、高揚感と一抹の不安の混じった、少年期特有の感覚とともにふとしたことがきっかけとなってよみがえってきます。このような記憶のよみがえりは、老年となった現在でも少年時代の感覚や気持ちを大切にしたいという思いを喚起します。また、本校のラーニング・コモンズや自習室の夏休みの光景を見ると、言葉にできない不安と焦燥感に駆り立てられるように、区営の図書館に通って受験勉強を続けた夏休みの日々の記憶がよみがえってきます。今思うと、我流で効率の悪い勉強と認識の甘さが致命傷となった恥ずかしい記憶ですが、当時の不安や焦燥感はかなり生々しいものとして現在の自分の中にも残っています。そして、その図書館で見た、黙々と勉強している人々の後ろ姿に対する畏怖の記憶が、様々な意味で現在の自分の一部を形作っているという思いにとらわれます。夏休みの記憶は、過去の自分と現在の自分とを繋げ、今でも大切にしたい気持ちや感覚を認識させてくれるもののようです。
この普段とは異なる時間の流れの中で、生徒の皆さんには、是非自分自身とじっくりと向き合う時間を持ってほしいと思っています。後年、夏休みに目にした光景や抱いた感慨が忘れられない、かけがえのないものとなる可能性があります。自身の裁量による時間の流れの中で、現在の自分を凝視する力は、内省力を育成することに繋がります。そして、この内省力は、現在の自分が抱える課題や問題点を把握する第一歩になるのです。サマーセミナー前期は終了したものの、部活の合宿など様々な行事がある八月ですが、夏休み固有の時間の流れの中で、内省的な時間を過ごしてもらいたいと思います。