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今月の一言

2023年10月のひとこと

 パンデミックが始まって以来、私たちは今までの社会的ルールや倫理性のすべてが正しいとも言えない状況を経験してきました。まるでコロナウイルスに、「人間の世界には群れをまとめるための法則があるようだけど、今回はそれが通用しないかもしれません。いよいよ既存の考え方にすがらない、自分たちの判断に頼るときがきたのです」というようなことを告げられているようにも感じていました。

 もっとも、それまで信じ、確信を持ってきたことを疑うのには、知性と想像力を駆使しなければなりません。基本的に怠惰を好む人間には、普段は使わない量のエネルギーが必要になってきます。信じていたものに疑念を持つことで不安も増長し、そこに費やされるエネルギーもまた増えることでしょう。信仰や信念というある種の怠惰ともいえる既存のタガを外すことは、それほど私たち人間にはハードルが高い。しかし、これまでの常識に「疑い」をもつことは、壁を壊して新しい生き方模索するのにいちばん有効な鍵になると私は思っています。

        『歩きながら考える』 ヤマザキマリ著
中公新書ラクレ 2022年9月

 新型コロナウイルスの出現により我々が失ったものはたくさんありますが、当然のことながら新たに得られたものもあります。それは人それぞれだと思いますが、新たに得られたもので私にとって特に大きいと思えるものを挙げるとしたら、「既存の考えにすがらず、自分の頭で考え自分で決める」という瞬間を、数多く経験することができたことではないかと思います。

 自分で決めたことが正しかったのか、については大いに疑問が残りますが、平常時であれば使わなかったであろうエネルギーを使った(使わなければならなかった)ということはコロナ禍だからこそのことだったと思います。

 超がつくほど怠惰な自分ですので、二度と同じような経験はしたくないと思っていますが、上記で指摘されているように、これまでの常識に「疑い」をもつことは、壁を壊して新しい生き方を模索するのにいちばん有効な鍵となりますので、変化の激しいこれからの社会を生き抜くために、今後も「当然と思えることを疑ってみる姿勢」を持ち続けるということを心に留めておきたいと思います。