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学校生活

佐久間校長の朝礼より:「成功より、成長を」

9月28日(土)、父母の会主催「山本昌邦氏講演会」が本校講堂で行われました。この方のお話を伺って大変感銘を受けましたので、今日はそのお話をぜひ君たちに紹介したいと思います。

山本さんは、サッカー部の諸君ならおそらく知っていると思いますが、日本代表の各世代の監督及びコーチを歴任され、日本サッカー界の発展に大きく貢献された方です。その方が「一流選手から学ぶ目標達成へのプロセス」というテーマで話をしてくださいました。

話の中に登場する選手の名前が中田英寿選手、本田圭佑選手というような錚々たる人たちばかりなのでそれだけでも興味をそそられましたが、特に興味深かったのは選手一人ひとりの性格や特徴についてのお話でした。

例えば山本さんは、中田選手や本田選手に対しては、試合の当日は、「今日は頼んだぞ」の一言だけだったそうです。試合前には自分の世界に入っていて、細かく指示を出しても耳に入らない。そのくらい試合に対して集中しているんですね。だから声をかけないわけです。

それに対し、例えば日本代表のキャプテンを務めていた長谷部選手には、ものすごく細かく指示を出したそうです。「このメンバーをこういう風に動かしてほしい」と伝えれば、長谷部選手は言われた通りにやってくれる、そういう選手だったそうです。

つまり、大切なことは選手の性格をよく理解したうえで、一人一人の力を最大限に発揮させること。それが監督やコーチとして最も重要な仕事だと話されていました。

また、超一流の選手に対し、山本さんがコーチとして対峙したとき、指導するというよりむしろ「説得する」という感覚の方が強かったそうです。一流選手は自分のやり方というものをしっかりと持っているので、納得しないと動いてくれない。そこで「なぜこのやり方で行くのか、なぜこの練習が必要なのか」ということを事細かに、そして徹底的に説明した。それは大変な作業だったようですが、一流選手というのは一度納得すると練習に対してものすごい集中力を発揮し、想像以上の結果を出してくれるそうです。

一方、代表選手を集めた合宿でも、中には手を抜く選手がいるそうです。例えば長距離走などで、コーチの目をかすめてショートカットをする。

そういう選手にコーチとして何を言うのか、またどのように接するのかとても気になるところですが、実は、何も言わないそうです。ただ、次の代表選手召集の際には、声をかけない。それだけだそうです。実に厳しい世界だと思います。

また山本さんのお話の中で、最も印象に残ったのは「成功ではなく成長を目指そう」という言葉です。

もちろん、誰でも失敗するよりは成功したいと考えていますし、成功するのはすばらしいことです。ただ、人間はそんなに強い生き物ではありませんので、成功をすると、つまり目標を達成すると、どうしてもそこで満足してしまいます。するとそこで成長が止まってしまうことが非常に多い。

それに対し、成功や失敗などの「結果」にこだわらず、「成長すること」を目指せば、結果が出た後でもずっと成長し続けることができる。

「成功よりも成長を目指す」、これが一流といわれる選手たちに見られる共通の考え方なのではないかと私は思っています。

最後に、もう一つ話をさせてください。

もし君たちが公共の場でマナー違反をしている中学生たちを見かけたら、顔見知りでなくても「周りの人たちの迷惑になっているよ」とか「それはマナー違反だよ」と言葉をかけてもらいたいと思います。教員が指導するよりも、先輩たちが話をしてくれた方が、下級生は問題意識を持つのではないかと思うのです。

もちろん中には、そんな君たちに反発する下級生もいるかもしれません。けれども、ほとんどの本郷生は、「ああ、この先輩かっこいいな、凄い先輩だな」と思ってくれるのではないでしょうか。本郷生はそういう生徒達ばかりだと思っています。

本来、指導するのは教員の仕事ですから、生徒の君たちに頼むことではないのかもしれません。ただ、本郷が一つのチームとして成長するにはみんなの力が必要だと思い、お話しさせていただきました。今後も後輩指導をよろしくお願いします。