野澤誠先生

野澤誠 先生

経歴

元・本郷中学校 教頭(平成8年度〜平成17年度)

100周年にむけて

私が在職した昭和51年(1976年)から平成24年(2012年)は、本郷学園が大きく変貌した時期でした。時代の要請で誕生した普通科・機械科・デザイン科の三科併設校から、理数科新設や6年コース中学校の再開、そして機械・デザイン・理数科の廃止と目まぐるしい動きでした。
在職期間の思い出は多く、奉職時から回想してみます。採用面接で、飲酒の有無を問われたのは驚きでした。後にその理由が分かりました。社会科は年に数回の酒宴があり、二次会には松平賴明校長も参加され、お開き後に松平先生を先輩教諭と御自宅の通用門まで送るのです。松平先生は、お酒をよく嗜まれ、とても気さくなお人柄ですが、酔われた時に、
「世が世なら、君は切腹だ」
と冗談を言われ、殿様の片鱗を垣間見せる愉快な先生でした。当時の教材作りは謄写版印刷なので、倹約家の女性事務長から手厳しく印刷技術を教え込まれました。下田の集団生活訓練は、体育科新井勲夫教諭を先頭にして引率教職員総出での遠泳やオリエンテーリングなど、生徒以上に引率の教員は疲れました。

昭和53年(1978年)、サッカー部が全国大会に出場し、雨中の準決勝で善戦の末、室蘭大谷高に敗れ、とても悔しい思いをしました。当時の運動部の活動はめざましく、漕艇部・陸上競技部・ラグビー部など、全国大会レベルでした。

教科内では、専任・講師合同で講読会が実施されました。学会の第一線にいる講師から教授を受け、年一回の社会科研修旅行で現地調査を行うなど、各自の教授力向上に努めた伝統は、今でも継続していると思います、また在職期間前半で忘れられない思い出に、我国でも先駆的な韓国修学旅行があります。社会科板垣勝夫・進藤幸彦両教諭より発案され、後に坂井利明・板垣勝夫両教諭の尽力で実施に至ります。昭和53年(1978年)、現地調査を兼ねて歴史研究部の生徒を坂井先生と引率した初の海外合宿は、非常に緊張しました。昭和56年(1981年)年の第一回修学旅行では、韓国中央高校とサッカー親善試合やレセプションなど生徒間交流もあり、アジアを通して世界を学ぶ意義深い教育活動でした。しかし、国内飛行機事故の影響もあり、昭和60年(1985年)で途絶えたのは、関わっていただけにとても残念でした。

当時はやんちゃな生徒が多かったのです。遅刻常習者にはグランド10周や坊主刈りなど、今思うと粗っぽい生徒指導でした。にも拘わらず。その彼らが必死にハングルの挨拶や歌を学び、金浦空港で合唱する容姿は妙に輝いていました。今でも、手を焼いた生徒諸君の顔名前は、記憶に残っています。担任教諭として、学級経営・教科指導・生徒会や部活指導、更に校外補導や進路指導室への大学合格者氏名の掲示など、一番教師冥利に尽きる頃でした。また、本郷学園60年史編纂に携わせて頂いたことは、本郷を深く知る良い機会となりました。

在職期後半は、徐々に本郷学園のイメージをアレンジして、オンリーワンの道を模索する日々が続きます。平成7年(1995年)、理数科新設、中学校再開に尽力された新井勲夫校長の勇退後、松平賴武校長が就任されました。当時の教職員の年齢構成は、逆三角形に近いピラミッドのうえ、管理職経験者4名を含む年長者の方々が多く、教員各自が本郷の未来像を抱いていました。松平校長から任命された職責を遂行するのは難問でした。その為、東京都私立中学高等学校協会の教頭部会や首都圏私学の関係者と定期的に議論を交わしながら、他校の状況を注視分析し、具体策を自校に導入する検討や施行検証を行いました。

平成12年(2000年)、高3の北島康介君が水泳でオリンピック出場した快挙は、本郷生に文武両道の誇りを再認識させてくれました。平成14年(2002年)、髙橋雄校長を迎えて、生徒主体の行事や希望制のカナダ語学研修など、新たな方向性が講じられるようになりました。と同時に、生徒指導の難しさを新たに突きつけられ、保健室の拡充やスクールカウンセラーの常駐など、環境整備も急務となる時期でもありました。ともあれ、内部組織や入試改革、進学実績の向上などが達成できたのは、現場の同僚教職員の理解と協力、努力の賜だと思っています。

管理職を辞した後は、中学生の要望で歴史研究部が再出発しました。平成23年(2011年)、東日本大震災の発生で帰宅困難となった多くの生徒が学校に留まりました。髙橋雄校長の勇退後、北原福二校長が就任し、微力ながら私学第10支部の支部長校の仕事に携わらせて頂き、学園父母の会役員の皆様やアシスタント、学園事務室の助力で、何とか完結できたことは直近最後の感無量の思い出となりました。本郷の縁で、多くの人との出会いがあり、良かったと思います。

建学の精神を変化する時代に対応させながら具現化させ、進学志向、少子化対策を模索し、色々とシフトチェンジするのは、本郷学園の命題です。変革期の様々な蟠りを乗り越え、日進月歩進化し続ける本郷学園は、これからも「オール本郷」で邁進するでしょう

現役生へのメッセージ

在校生のみなさん、コロナ禍の世に限らず、何事にもマニュアル的な思考をせず、豊かな発想力と行動力を備えた柔軟な臨機応変な知識人を目指されるよう期待します。本郷のスピリッツ「紳士であれ!」、自学自習、自主自立の気骨で精進して下さい。

本郷学園は、多くのことを学び経験できる学舎なので諦めずに努力して、夢を実現させましょう。

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